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B級映画「のぞきめ」に学んだホラー作品の作法

 今月初め、映画の日なので友人と「響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~」を観ようと思い新宿に繰り出したのですが、あいにくどこの劇場も予約でいっぱいでした。

 しょうがないので、たまたま目に付いた板野友美主演のホラー映画「のぞきめ」を見たのですが、びっくりするくらいつまんなかったです。八尺様とかくねくねの方がよっぽど怖い

 つまらなかったのですが(今まで見た映画でも圧倒的につまらなかったです)、それでも、「ホラー作品を作るうえで気を付けなくてはいけないこと」がこの映画のおかげで見えてきたので、ちょっと備忘録。

1.設定の理屈を一貫させよう

2.ちゃんと殺そう

3.「きっかけ」に気を付けよう

 以下よりネタバレが含まれますので、(いるかはわかりませんが)「のぞきめ」視聴を楽しみにしている方はお気を付けください。


1.設定の理屈を一貫させよう

 作中冒頭、一人の男子学生が「のぞきめ」によって死にます。学生は「のどに泥が詰まり」、階段から落ちた衝撃で「腹が捻じれて」死んだと説明されます。彼の直接の死因は泥を喉に詰まらせた窒息死です。

 次、その男子学生の恋人だった女性もまた「のぞきめ」の呪いに苦しめられます。こちらの女性は、「のぞきめ」にのぞかれ続けることで精神を病んで精神科へ入院しますが、再び「のぞきめ」にのぞかれて発狂し、外に逃げたときにトラックに跳ねられて「腹が捻じれて」死にます。この過程で、女性は部屋でシンクから溢れでる泥を確認し、また主人公(この時点でまだ「のぞきめ」には憑かれていない)が部屋に残された「泥」を確認することで、泥が女性の幻覚なのではなく実在していることを示します。

 次、主人公の彼氏が「のぞきめ」にのぞかれます。彼は発狂しますが、目を自ら潰すことで最終的には「のぞきめ」から逃れました。彼氏が「のぞきめ」に憑かれたときに主人公が彼氏の部屋に訪れた際、部屋に泥が落ちていること確認します。また、彼氏が病院で発狂した際、「のぞきめ」が現れて口から大量の泥を吐くシーンがあり、泥とのぞきめの関係を示唆します。

 以上こんな感じでみんな死ぬんですが。作中では、「のぞきめ」に詳しい研究者?のおじさんがこう語ります。「のぞきめは実在する」「だが何もしない、見るだけだ」「妖怪や霊の類は姿を現すだけでいい」と……

 そして実際、主人公の彼氏と研究者のおじさんは盲目になったことでのぞきめから逃れることに成功しています。

 …

 いや待って泥は?????????????????????????????????????

 のぞきめは何もしない????????????泥で喉詰まらせて殺すんじゃないの????????????

 「のぞきめ」になった元六部の少女が死体を埋められる描写があるのは、「のぞきめ」に憑かれたら泥で窒息死させられることを言いたかったのだと思ったのですが、彼氏と研究者のおじさんは生きていますね。「のぞかれたら死ぬ」んちゃうの??????????なんで生きてんの?????????????

 ここがすごい矛盾していて、設定に説得力のかけらもなかったです。

 つまり見なけりゃ生き残れるなら、のぞかれる気配がしたら目閉じればいい。それで生き残れる。

 幽霊とかって理不尽に殺しにかかってくるから怖いんだろ、対処法が確立されてると思うと全然怖くないじゃん。

2.ちゃんと殺そう

 前項で述べた通り、「のぞきめ」は基本的にのぞくだけです。「のぞきめ」がのぞく→のぞかれた人が発狂→マンションから転落するなり車にはねられるなりで死ぬ、という流れで死にます。

 しかしまあ、この設定上のぞきめが出来るのは「のぞくだけ」なので、犠牲者が死に至るシーン(≒ホラーシーン)がワンパターンになってるんです。つまり、ドアの隙間や換気扇から目が→ドンッと大きな音とともに目が見開かれる→犠牲者が発狂する、という流れ、このパターンでしか人が死なない。

 飽きます。

 せっかく泥で殺せる設定がある(はず)ですが全然生かしきれていません。

 はっきり言って精神ブラクラ、びっくりgifレベルの「怖さ」です。絵と音の力技でびっくりさせてるだけです。

 ホラー映画見た後って暗い所になにかいそうな気がして怖くなるものですが、この映画ではこのせいで全然なかったです。

 3.「きっかけ」に気を付けよう

 「のぞきめ」に憑かれるには、田舎にある「六部峠」という場所に行かなくてはいけません。

 …

 なるほど「六部峠」にさえ行かなきゃ「のぞきめ」に憑かれることはないんだね!!!!

 ホラー映画なんて全然見ませんが、他のメディアでホラー作品にある程度触れた経験から言って、良いホラー作品は作品のエンディング後にも恐怖を引き摺ってしまうものです。呪いや幽霊といった存在に説得力をうまく持たせているからです。

 その点で本作は、前項の矛盾のせいで元々説得力が皆無です。その上呪いや幽霊に関わりあってしまう「きっかけ」まで視聴者の身近でないものになってしまったら、そりゃ何も怖いものなんてないですわ。

 


 その他にも無限に突っ込みたいのですが、物語作りに関わるところだけピックアップしました。八尺様やくねくねの方が怖い話としては出来がずっと上です。1080円も払って見た映画が2chのコピペ以下の出来だった時の私の気持ちを汲んでください。

 最後に、無限に突っ込みたいところがある中でもどうしても一つ言いたいことがあります。

EX.大根役者を使うな

 名指ししましょうか。主演の板野友美のことです。あまりにひどく下手な演技で、彼女の一挙一動に私は現実に引き戻されました。同行の友人は「アヒル口のせいで集中できなかった」と言っていましたが、断言しましょう。演技のせいです。

 明らかに訓練不足でした。声の抑揚や身体の動きが小さかったために全然カメラ映えせず、一切のリアリティを作品に与えていませんでした。